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資産計上した開発の減損

凍結後の大幅な方針転換・計画未達・遊休化は減損の兆候。判定は経理、検知できるのは作る側だけ

項目 内容
疑うべきルール 固定資産の減損に係る会計基準
確認タイミング 運用時・大規模改修や方針転換の企画時

なにが問題になるか

資産計上されたソフトウェアは、償却が終わるまで帳簿に残ります。その資産が「投資額を回収できる見込みがなくなった」状態になると、減損——帳簿価額を切り下げて損失を計上する処理——の検討対象になります。減損の兆候として会計基準が挙げているのは、たとえば次のようなものです。

  • その資産を使う事業の損益が継続してマイナス
  • 資産の使用範囲・方法の著しい変化(事業の廃止・再編、遊休状態になった、用途変更)
  • 経営環境の著しい悪化

これをソフトウェア開発の現場のことばに翻訳すると、こうなります。

  • 資産計上して作った機能を、ほぼ捨てて作り直すことになった(凍結したはずの仕様の大幅変更、フルリニューアル)
  • 事業のピボットで、初期に作った主要機能が実質使われていない
  • 資産計上の前提だった収益・費用削減の計画に対して、実績が大きく未達
  • フェーズ分割した開発で、後続フェーズが凍結・中止になった

最後のケースは見落とされがちなので補足します。「フェーズ1は基盤で、効果はフェーズ2以降の完成で出る」という構成では、フェーズ1の資産計上・仮勘定計上は後続フェーズ込みの計画を根拠に成立しています。フェーズ2の凍結は、現場では「一旦保留」で済む話でも、帳簿の上ではフェーズ1分の資産が計画という根拠を失うイベントです。これは制作途中でも同じで、ソフトウェア仮勘定も減損会計の対象とされており、完成しないまま長期滞留した仮勘定は監査でも注目されます。後続フェーズの凍結・中止が決まったら、その時点で経理に報告することを勧めます。

問題は、これらが全部現場で先に起きることです。経理が資産の状態を見直すのは決算のタイミングですが、そのときに現場の状況が伝わっていなければ、兆候の検知そのものが遅れます。減損すべきものを計上しないまま決算を出すことは、会計監査や上場審査で問題になりえます。逆に、作り直しの企画が立った時点で一報が入っていれば、経理は検討を始められます。

なお、減損の要否や金額の判定は将来キャッシュ・フローの見積りを伴う専門的な領域で、作る側が判断することは一切ありません。やることは兆候の共有だけです。

確認すべきこと

  • 自分たちのプロダクトのうち、どれが資産計上されて帳簿に載っているかを把握している(経理に一覧をもらう)
  • 資産計上済みの機能の作り直し・大幅改修が企画されたら、経理に共有するフローがある
  • 事業のピボット・機能の廃止方針が、経理にも届いている
  • 後続フェーズの凍結・中止が決まったら、先行フェーズの資産計上分(仮勘定含む)とあわせて経理に報告するフローがある
  • 主要機能の利用状況(使われているかどうか)を把握できる状態にある

こんな状況が出たらアラート

  • 資産計上して作った機能の「フルリニューアル」「作り直し」が始まろうとしている
  • 仕様凍結後に、前提を覆すレベルの方針転換が起きた
  • ピボットの結果、初期の主要機能がほぼ使われていないのに帳簿には載ったまま
  • 資産計上時の事業計画と実績の乖離が大きいことを、現場は知っているが経理は知らない
  • 後続フェーズの凍結が決まったのに、先行フェーズで資産計上・仮勘定計上した分の話を誰もしていない

経理への連絡テンプレ

資産計上されている開発について、状況を共有します(減損の要否のご判断用です)。
・対象:(プロジェクト名/機能名)
・起きたこと:(作り直しの企画が開始/後続フェーズの凍結・中止/ピボットで利用が大幅減/計画未達 など)
・時期:(意思決定日・関連する稟議や議事録)
・補足:(利用状況のデータなど、あれば)

あわせて確認

最終更新 2026年7月19日