コンテンツ・画面系
素材・購入画面・データ収集で確認すべきこと。「指示通りに作った」「悪意はなかった」は免責にならない
「フリー素材のクレジット表記はどこに書けばいいか」「ユーザーの投稿画像をバナー広告に使っていいか」「サブスクの購入画面には何を書けばいいか」「競合サイトのデータをスクレイピングして分析に使っていいか」。画面を作り、素材を使い、データを取ってくる作業は、そのすべてが誰かの権利に触れています。
このカテゴリは扱う法律の幅が広く、素材・コードの権利(著作権法)、購入画面・広告の表示(特定商取引法・景品表示法)、データの自動収集(不正アクセス禁止法・不正競争防止法・刑法)の3領域に分かれます。共通するのは、いずれも実装そのものに直結すること。そして「デザイナーやPMの指示通りに作った」「悪意はなかった」が、いずれの領域でも免責にならないことです。
こんな言葉が仕様に出たら
- フリー素材 / OSS / ライブラリ / ライセンス / クレジット表記
- フォント / Webフォント / PDF出力 / アプリ同梱
- ユーザー投稿 / UGC / バナー / キャンペーン素材 / インフルエンサー / PR表記 / レビュー施策
- 購入画面 / 最終確認画面 / カート / 定期購入 / サブスク / 初回無料
- セール / 通常価格 / 取り消し線 / 割引率 / カウントダウン
- 解約 / 休止プラン / 解約率
- スクレイピング / クローラー / 自動収集 / 競合調査
機能別の確認事項
素材・権利まわり
| 実装しようとしている機能 | 主な確認事項 |
|---|---|
| フリー素材・OSSライブラリの利用 | 「無料=自由に使える」ではない。CC BY(クレジット表記必須)と CC0(表記不要)は別物。GPL・AGPL はコピーレフトで、プロダクト全体を同じライセンスで公開する義務を負う可能性がある。依存ライブラリは license-checker-rseidelsohn 等でCI/CD上に自動検知を組む。AI生成物も「著作権フリー」ではない |
| Webフォント・フォントの埋め込み | 用途ごとに別ライセンス。デスクトップ用途/Webフォントとしての配信/PDFへの埋め込み/アプリへの同梱はそれぞれ別枠。「デスクトップ用途は購入済み」でも配信ライセンスは別途必要なことが多い。PDF出力機能やフォント同梱アプリは特に注意 |
| UGCの広告・プロモーション利用 | 著作権は投稿者に帰属。「サービスに投稿された」だけでは事業者が自由に使えるわけではない。利用規約の非独占的ライセンス条項が前提になるが、「想定外の利用」は許諾範囲を超える(他社への素材提供など)。加えて2023年施行のステマ規制:対価を渡した投稿に「広告」「PR」表記がない、事業者が関与した投稿を一般投稿のように見せる、は不当表示になる |
購入・解約フロー
| 実装しようとしている機能 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 通販・EC購入フローの実装 | 単品購入でも最終確認画面の表示義務がある。商品・サービスの内容/販売価格(送料含む総額)/支払い時期・支払い方法/申込みの撤回・解約に関する事項の4点。加えて、「特商法に基づく表記」ページの設置義務(事業者名・所在地・電話番号・返品・解約条件)。セール価格の見せ方も規制対象:販売実績のない「通常価格」との比較(二重価格表示)は有利誤認のリスク |
| 定期購入・サブスクの購入フロー | 2022年改正で強化。上記4点に加え、定期購入である旨/支払い総額(初回だけでなく継続回分も含む)/解約方法・解約条件が必須。「初回980円」を大きく、「2回目以降は毎月5,980円」を小さくは不当表示にあたる。消費者庁は2023年以降、ダークパターンに業務停止命令を出している |
| 解約フローのUI設計 | 解約を不当に困難にするUIは違法。解約申請後の複数ページにわたるアンケート、背景色と同化した解約ボタン、休止プランへの繰り返し誘導が該当する。「解約完了までのUIフロー全体」をデザインレビューの法的チェック対象に含める |
データ取得
| 実装しようとしている機能 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 外部サービスのデータ自動収集(スクレイピング) | robots.txt に法的拘束力はないが、無視してよいという意味でもない。ログインの要否が第一の分岐(認証回避・他人のアカウントを使ったアクセスは不正アクセス禁止法違反=3年以下の懲役または100万円以下の罰金)。体系的な大量取得は不正競争防止法の問題になりうる。リクエスト間隔の設定は法的防御策。User-Agentに自社名・連絡先を記載する |
このカテゴリの勘所
ライセンスは「使っていいよ」の条件書きです。 著作権法上は、権利者の許諾がない限り著作物を利用できません。「無料で使えるなら何でもOK」ではなく、クレジット表記が条件のものもあれば、コピーレフトでプロダクト全体の公開義務を負うものもあります。パッケージマネージャ経由の依存を手動で追うのは現実的でないので、ライセンス確認はCI/CDに組み込んで自動で落ちるようにするのが理想です。
特商法の義務は、フロントエンドの実装そのものです。 最終確認画面に何を表示するか、文字サイズをどうするか、解約ボタンをどこに置くか。これらはすべて実装者が書くコードの話であり、「法務やマーケティングの問題」ではありません。行政処分の対象はシステムを運営する事業者ですが、実装者は「この画面は法的要件を満たせているか」を確認できる立場にあります。
景品表示法は「見せ方」の法律です。 特商法が「表示すべきものが揃っているか」なら、景表法は「その表示が実際より良く見せる嘘になっていないか」を問います。販売実績のない「通常価格」との比較(二重価格表示)、広告と分からない宣伝投稿(ステマ規制)が代表例で、どちらも文言・UIそのものが規制対象です。取り消し線の価格UIやレビューキャンペーンの仕様が出たら、実装前にアラートを出してください。
スクレイピングは「規約違反」と「犯罪」を区別してください。 利用規約違反は民事上の問題(アカウント停止・損害賠償請求)で刑事罰はありません。一方、不正アクセス禁止法・不正競争防止法の違反は刑事上の犯罪で、逮捕・起訴の対象です。そして悪意がなくても、ループのバグや過度な並列処理でサービスを止めれば業務妨害罪(刑法第234条の2)になりえます。2010年の岡崎市立中央図書館事件では、デフォルト設定のままのクロールプログラムが障害を起こし、開発者が逮捕されました。
あわせて確認
- 何かを「販売」するなら → 商材から引く(商材によっては別の許認可が必要)
- 収集・連携するデータに個人情報が含まれるなら → 外部CRM・メール配信サービスへのデータ連携
- 埋め込むタグ・SDKがあるなら → アナリティクスタグ・SDKの埋め込み
- UI設計段階の確認漏れは → フェーズ2:設計時
- 実装中の確認は → フェーズ3:実装時
- 表示義務の最終確認は → フェーズ4:リリース前