使わなくなったソフトの除却
廃止した機能・旧システムを帳簿から落とす。「今後使わない」ことを示す日付のある記録を残す
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 疑うべきルール | 法人税基本通達(ソフトウエアの除却)、固定資産の会計処理 |
| 確認タイミング | 機能・システムの廃止時、リプレース時 |
なにが問題になるか
資産計上されたソフトウェアを使わなくなったのに帳簿に残したままだと、実態のない資産の償却費を計上し続けることになります。一方で、ソフトウェアには物理的な「廃棄」がありません。そこで税務上は、物理的な除却・廃棄がなくても、そのソフトウェアを今後事業の用に供しないことが明らかな事実があるときは、帳簿価額を除却損として損金算入できる扱いがあります(法人税基本通達)。自社利用ソフトなら「対象業務が廃止された」「ハードウェアやOSの変更で別のソフトに乗り換え、従来のものを利用しなくなったことが明らか」といったケースが典型です。
エンジニア視点でのポイントは2つあります。
1つ目: 現場の「終わり」と会計の「終わり」はタイミングが違う。 現場ではリプレース完了・最終デプロイ・リポジトリのアーカイブで一件落着ですが、会計上はそこからがイベントです。旧システムを止めたことが経理に伝わらなければ、帳簿では動き続けていることになります。リプレース案件では、旧システムをいつ帳簿から落とすかまで含めて経理と話しておくのが安全です。
なお、完成前に開発計画そのものを中止した場合も話は同じです。制作途中の費用が集計されているソフトウェア仮勘定をどう処理するか(費用化・除却)は経理の判断事項なので、中止の意思決定の記録を残して共有してください。後続フェーズだけを凍結して先行フェーズは残る、というケースは減損の話になります。
2つ目: 「使っていない」ことは記録で示す必要がある。 「今後使用しないことが明らか」かどうかは、税務調査でも客観的な資料で確認されます。廃止の意思決定(稟議・議事録)や停止作業の事実(最終デプロイ日、サーバ停止日、DNS切り替え、リポジトリのアーカイブ日)が日付のある記録として残っていることが効きます。普段の開発で自然に残るログや ADR が、そのまま証憑の材料になります。逆に「いつか使うかもしれないから」とサーバだけ止めて塩漬けにしていると、使わないことが「明らか」とは言えず、除却できない状態が続きます。
確認すべきこと
- 機能・システムの廃止が決まったら経理に共有するフローがある
- 廃止の意思決定が、日付のある記録(稟議・議事録・ADR など)で残っている
- 停止作業の事実(最終デプロイ、サーバ停止、DNS 切り替え、リポジトリのアーカイブ)を日付つきで記録した
- リプレース案件で、旧システムの除却タイミングを経理と確認した
- 完成前に開発を中止した場合、仮勘定に集計済みの制作費の扱いを経理に確認した
- 「念のため残す」場合、それが会計上どういう状態になるかを経理に確認した
こんな状況が出たらアラート
- 旧システムを止めたことを、経理が誰も知らない
- サービス終了の社内アナウンスはあったが、日付のある記録が何も残っていない
- 廃止済みの機能が「念のため」でホスティングされ続けている(会計上は宙ぶらりん、インフラコストも垂れ流し)
- リプレース計画に、旧システムの停止と記録のタスクが入っていない
経理への連絡テンプレ
ソフトウェアの利用停止について共有します(除却のご判断用です)。
・対象:(システム名/機能名)
・停止の理由:(リプレース完了/対象業務の廃止/サービス終了 など)
・意思決定の記録:(稟議・議事録の日付とリンク)
・停止の事実:(最終デプロイ日、サーバ停止日、リポジトリのアーカイブ日 など)
あわせて確認
- 完全にやめる前の「大幅に作り直す」段階 → 資産計上した開発の減損
- そもそもの資産計上の前提 → 自社開発ソフトの資産計上
- 運用中の定期確認 → フェーズ5:運用継続中